玩弄 薔薇帛










 * * * 

一度は頼れるとまで思った男が、最初は唯憎らしくて疎ましかった。
他の男の夜の相手をしないように見張るためか、お目付け役の様に俺の部屋に居座る島様。
俺の部屋な筈なのに、段々悪くなる居心地。
三成は安らげないことと客を取れない鬱憤で、左近を冷たくあしらっていた。
客が来ない時なんかは、兼続の所に行って、一日帰らない日もあった。
それでも島様は、咎めはしなかった。
それどころか、俺が視線を向けると逸らすし時々は憎しみさえ込められている目で俺を見た。
こんな楽な仕事も無いだろうと、何で俺を睨む必要がある。
見張っているだけで三度の飯にありつけて、女を抱きたいなら隣に行けば直ぐ手に入る。
何が不満なんだ。不満なのは四六時中監視下に置かれている俺だろう?
そんな風に俺は思っていた。
明日は晴れ渡ることを約束する、深い洛陽の光が部屋に差し込む今日までは。
今日は丁度、島様が此処に居座って一週間が経つ日。
「…いつもそんな端にいるが、飽きないか?」
窓から直接日のあたる其処が所定地になっているのか、眩しそうにしながらも動かない島様。
三成は厭きれた様に言った。
「……えぇ、飽き飽きしてますよ。」
静かに笑った顔からは、諦めに似た切なさが滲んだ気がした。
「…お前、筒井様の右腕なんだろう?」
俺はちゃんとした仕事がしたいんだろうな。と、ぼんやり思いながら聞いた。
島様の頭の後ろで一つに括られている、黒い髪が肩を流れる。
「…右腕が、こんな所で見張ってるわけ無いだろ」
伏せ目がちだった眼が、低い静かなる怒声と共にこちらに向けられた。
しまったと、そう思ったときには後の祭り。
昔、兼続にいわれた言葉が三成の頭の中を渦巻く。
『三成は意識せずに神経を逆撫でするから気を付けるようにな』
慌てて謝罪をしようとした。
だが、荒く突き飛ばされ組み敷かれた三成はその深い憎しみを秘めた瞳に言葉を奪われる。
「…誰のせいだと、思ってる?…えぇ?薔薇さんよ。」
それはまるで、あんたのせいだと言わんばかりの口振り。
自嘲しながら島様は積もりに積もった鬱憤を吐き出した。
「俺が、何したよ。研修行ってノウハウ盗む為に異国語勉強して」
俺を見下げている顔が、どんどん歪んでいく。
「この人に俺の生涯捧げるってよ、会社に尽力して…この扱い…」
半ば放心状態の三成に、左近はさらに不満を連ねる。
やってられるかと怒鳴ってまた三成を睨む。
島様が筒井社長の事を言いながら、俺の着物の前合わせを強引に分けた。
「せめて愛猫を陵辱でもすれば…この憂さも晴れるか…?」