玩弄 牡丹帛










 * * * 

今まで、女なら黙っていても寄って来たから俺からどうこうしたことは無かった。
俺の何が良いのか、いろんな女からの褒め言葉は一貫してなかったから。
多分誰も、俺というよりかは職種柄で俺を好きになったと思い込んだんだと思う。
牡丹を買う金ぐらい普段から持ち合わせている。
自分で言うのもあれだが、俺はこれでも二枚目で売り出されてもいる。
如何せん、図体がでかいから女形だけは無理だが。
でも、買ってしまったら。
永遠に惚れたあんたの心には触れも出来ない。
「でもなぁ…」
そもそも何かを贈るにしたって、男物を贈ればいいのか女物を贈ればいいのか。
問題はそこからだった。
男色の連れなんかに聞いてみたが、それだって様々らしい。
見た目がいくら女だからって、小物を贈ったら投げ返されたよ。
そんなのを聞くと益々贈れない。
「…文で良いか…」
しかし、いきなり惚れたんだ。駄目かね?じゃ…なぁ。
紙を広げたものの、書き出しが浮かばない。
臭い言葉は腐るほど浮かんでくるが、そんな陳腐な言葉でこの思いを伝えたくない。
否、伝わらない。
「…そういや、あの餓鬼…独眼の昇り竜とか…」
巷で結構有名だったな。
思い出すのも腹立たしいが、それを思い出した事で俺は絵を描いて渡そうと考えた。
俺だって、歌舞伎界の虎だと言われた事もある。
絵心は無いが一生懸命描けばどうにかなるもんだ。
絵の上手さを示したい訳じゃないんだから。
俺の気持ちを伝えたいだけなんだから。
「…心を開いてくれたなら…」
描いた絵に説明書を入れて少し面白みを出す。
もし、いつか俺を好きになってくれたなら。
「…これを現実に…」
俺があの御曹司とやらを倒してやるから。 お手玉に入れたその手紙に描いた絵は、俺のそうなって欲しい願望でもあった。
善は急げというから、早速あの窓の下に来た。
昼から夕方にかけては歓楽街なんてのは閑散としている。
一応周りを見回して人が居ない事を確認して、開いている窓にお手玉を投げ上げた。
「…」
お手玉は上手い事牡丹の部屋に吸い込まれてくれた。
どうか。叶ってくれ。
慶次は祈ってその場を離れた。