和の言葉を題材にして50のお題





比翼連理



腕からすり抜けるのさえ心苦しい。
寄り添い眠る貴方の容貌は、寝ているのに華やかで言葉を失う。
薄い唇も細い眉も。
煙る睫も筋の通った鼻も。
もう誰にも見せたくは無い。
俺の腕の中だけでいい。
そう願っても、隠し切れない芳香は俺の腕から逃げてしまう。
いっそ、この夜に乗じて…
「……三成…」
駄目だ、そんな事。
肩を抱いた手をなんとか放して左近は天井を仰ぐ。
なんて浅はか。なんて愚か。
俺一人の物にしたいから、命まで欲しいと願ってしまうなんて。
きつく瞳を閉じ、深呼吸をした。
「…左近…」
三成が目を覚ましたのか、左近を呼んで体を寄せなおした。
精一杯手を伸ばし、左近の脇腹に手を回す。
寝ぼけ眼ではないが、何時ものきりっとした感じではない。
見上げた瞳が、少しだけ揺れた。
「…左近、太陽を落してくれ…朝日など要らぬ…」
全身が、切なさに震えた。
互いがこの夜が永久に続けばと思っているのに、決して続きはしない。
同じ思いで、互いだけを感じておきたいと思っているのに。
それは、生きている限り叶いはしない。
「なぁ…左近……」
肌蹴た胸板に触れた、三成の唇。
刹那に落ちる、人肌の温もりの雫。
「朝なんて…来なけりゃ良いのにね…」
誰よりも愛しいのに。
傍にいるだけで、こんなに苦しい。