和の言葉を題材にして50のお題





洋 燈



「ビードロ…なんと幻想を思わせる。川のせせらぎの様だ…!」
慶次は目の前の兼続に大層ご満悦だった。
第六天魔王の伴天連贔屓には些か閉口していた慶次。
粋ってのは、今まで培ってきた中に芽吹く物だと信じて疑わなかったからだ。
だが、そんな慶次にも心を動かされた物があった。
それが、ビードロ。
溶けない氷のようでありながら、水晶の様に固くもない。
その、脆さが慶次を虜とした。
そして、南蛮商との交渉の末手に入れたのが、この洋燈。
中は蝋燭なのだが、それがビードロを越すと淡い暖かさが生まれる。
「それで居て、翠影の木漏れ日をも感じられる…!」
兼続は様々な角度から、厭きる事も知らずに眺め続ける。
知識を得る事に貪欲な兼続は、触れてもいいか?と子供の眼差しで慶次を見上げた。
「好きなだけ触んな。」
すると、程無くして感嘆の溜息。
「…こんなに珍しく、美しいからだな……」
だと思ったのに。
再び見上げた兼続の顔は嬉しそうではなかった。
「…この様なものが沢山有る異国に」
言葉半ばで、兼続は慶次の袖を握った。
「そなたは…私を置いて、行ってしまいそうで恐ろしい…」
見詰める瞳に、からかいの色は無かった。
「…あんた以上に、俺の興味をそそるものがあるかね」
慶次は、洋燈の蝋燭を抓んで消した。