和の言葉を題材にして50のお題









無いのに越した事はない。
それは分かっている。
戦わずして勝つ事が、最も肝要であることは熟知している。
だが、戦が無ければ…
左近は兵法書を片手に、過去にあった戦法などを常に思案していた。
敗因は勿論の事、勝因から始まり、地の利など。
特に他国同士の争いは、両方の考えをまとめながら実戦への活用を考える。
想定しておいて、得になることはあれど損は無い。
だが左近は、己の考えを書き綴っていた手を止める。
「…必死だな…」
自嘲して、それから筆を置いた。
外は宵も過ぎ、手を付けていない膳が置きっ放しである。
「そこまでして、俺は必要とされたいんだろう…」
俺が殿の役に立てるといったら、苦手な側面を補うほかは無い。
そう、これしか無い…
兵法では誰にも負けまい。
そして何時しか、絶大な信頼を寄せて貰えれば…
左近は邪だと卑怯だとは思った。
貴方を手に入れたいばかりに、何百人もが命を落す戦を望むのだから。
だがもう、そんな罪悪感も何時しか盲目により麻痺する。
「片恋」
あぁ、触れてしまいたい。
…俺のものにしてしまいたい。
早く戦にならないものか。
誰よりも頼りになれないものか。
左近には、胸に秘める思いが狂気だとは、最早気付く術が無い。
正気が蝕まれ心が拉げた音がした。