和の言葉を題材にして50のお題





寒 雷



吹雪とまではいかないが、吹き付ける雪。
雨戸を閉めたとて風が強い事は、耳に入る隙間風の悲鳴で歴然過ぎるほど。
おまけに、雷までなり始めて台風と違わない。
慶次は兼続の所に寄っていたのだが、あれよあれよと雪が降り瞬く間にこんな模様。
帰るにも帰えれない状況だった。
「…まぁ、兼続のところには本が湧くぐらいあるから…暇は持て余さないが…」
こんなとき、本という物は便利でいい。
兼続の所蔵の本の中から、好みの本を引っ張り出し慶次は笑う。
が、その笑顔の先には白いと言うよりかは蒼さが目立つ横顔が俯いていた。
「…どうしたんだい?」
慶次は、本の角でとんとんと肩を叩いて兼続を呼んだ。
不安そうな顔が、こっちを向いて軽くうなずく。
「…か………雷が…」
ともすれば、雷の音。
兼続は言葉の途中で詰まってしまった。
雷?
慶次は気付いた。
さっきからずっと腹を押さえているかと思えば、そこはそう言えば臍で。
思い返せば、風音に時折混ざる雷鳴が屋敷を揺らす度。
塞ぐように本を閉じていた、な。
「…怖いのかい?」
兼続は認めたくなさそうにぐっと押し黙ったが、本当に本当に小さく。
「…ぁぁ…」
と言った。
途端に慶次が兼続の傍に擦り寄る。
「おいで」
兼続は不服そうに視線をそらしたが、そっと胸に寄り添ってきた。
それが、途轍もなく可愛かった。
…一人前の御仁に可愛いなんて口が裂けても言っちゃいけないが…
その姿は普段見せないぶん、本当に可愛くて。
少し、いや…かなり悩ましかった。
そなたは落ち着く…と兼続が恥ずかしさを紛らわす様に笑う。
反対に慶次は、弱ったなと笑い返した。