和の言葉を題材にして50のお題





紅 葉



知っている秋の歌を互いに言い合いながら、慶次と兼続は紅葉狩りに出かけていた。
川を流れる楓。石畳に落ちる銀杏。
路傍に生える茸。木に巻きつく通草。
「何度廻ってきても、厭きない…」
慶次は松風の背に寝ながら、幾重にも重なる紅葉の美しさを愛でた。
「そうだな…言葉を探すのも難しいぐらい…」
兼続が、落ちぬようにな。と笑ったとき。
冷たさが隠れた風が木の葉を急かせた。
早く振り散ってしまえと。
「まるで、攫われるみたいだねぇ…」
風が色付いた葉を連れ去るのか、雨の様に降り始める。
「おぉ…、なんと…」
兼続は地面に降りて上を見るには障る被り物を取った。
「美しい雨だ!」
慶次は笑い、自分も地べたに降りる。
紅葉を見上げ続ける兼続。
全てがあんたの為に存在しているように見える。
「…!?」
見惚れていた目の前を、葉が隠して一瞬だがあんたの姿が消える。
再び見えたかと思えばまた阻まれる。
慶次は無意識に兼続に近寄って、木葉時雨を浴びる兼続を抱き締めた。
馬鹿だとは分かってる。
命の仕舞いの儚さに、ふと兼続を持っていかれるかと思ってしまった自分が。