和の言葉を題材にして50のお題





一人静



誰かが言っていた、押して駄目なら引いてみろと。
お前が、こんな花を俺に摘んでくるから悪いんだ。
「…殿、聞こえてますでしょう?返事してくださいよ」
一時は経ったかと思いきや、まだ一刻。
駄目だ、目標には程遠い。返事をしてはならぬ。
「……ねぇ、俺が何したってんですか?」
最初は唯の気紛れで返事をしないのかと思ったのかもしれない。
だが、今は結構必死に声を掛けてくる。
「……年甲斐も無く、駄々を捏ねないで下さいよ…」
思わず、そんなんではない。と言いそうになり口を硬く結ぶ。
だが、堪えるのもまた辛い。
三成は立ち上がり、左近から間合いを取って部屋の端に座った。
取り残された左近を見る。
なんだか置いてけぼりを食らって滑稽だ。
「…俺だって、怒りますよいい加減。」
左近はとうとう俺に声を掛けるのを諦めて、俺に背を向て寝っ転がった。
「何なんですか、言わなきゃ何も分かりませんよ…」
「…俺に黙って欲しいから、一人静を抓んできたのではないのか?」
近寄って不貞腐れている顔を覗きこんで一言。
左近は、は?と俺を見上げる。
そして俺の今までの行動を理解したのか。
いつもは見せない、悔しそうな顔をした。
「…じゃぁ、今から喋れなくして差し上げましょうよ」
割合、不機嫌な顔が近づきすぐさま俺の口を塞いだ。
首に巻きつく手は、もう俺を離そうとはしない。
接吻の間合い、微かに目を開くと左近と瞳が合った。
二人で喋れなくなりましょうか?
深くなる口付けに、そう言われた気がした。