しずかでやわらかい和のお題20





たわや腕の



そのたおやかな体で、貴方は俺を守ろうとする。
俺に守られるのだけでは釣り合いが取れては居ないではないかと。
戦場で一度本陣を抜けて俺を助けに来た貴方は言った。
馬鹿な事を言う、主だと思った。
なら誰も死なない采配をすれば良いじゃないか。
そう考えて、よくよく考えると。
成程本当に出来うる限りで、戦を回避していた。
それなら軍師の俺なんて要らないんじゃないか?
いつかの宴の席で冗談交じりに言ったら。
いざと云う時までお前の命は俺が守ると言った。
まるで答えになんてなってなかったが。
なんだか胸を突くような、目頭が熱くなるような心地がした。
じゃぁ、間際になりましては俺が殿を生かして進ぜましょうと言ったら。
間際なんて招かんと少し不機嫌に目を逸らしましたね。
ねぇ、多分。
今がその間際です。
正直、偏屈で不器用で可笑しくなるぐらい生きにくい人。
でもそんな貴方の為に、友が何人散りましょうや。
私もまた、そんな貴方の為に。
死に花を咲かせて魅せましょう。
殿の腕で振るう采配が悪かったのではありませぬよ。
貴方の腕は、大事なものをいつでも守っておいででした。
今度はそんな主を守る番です。
最後ぐらい、この島の左近に格好を付けさせてくださいよ。