托生
寄生している、気がしてならない。
距離を取ろうとしているが其れすらうまくいかない。
どうしてしまったんだろう俺は。
気が付けばお前の傍に居る、お前を探している、困らせている。
不安と並べればこの行為が許されるか、否。
お目付け役と押し通せば許されるか、否。
好きだからと言えば許されるのか…否。
あぁ、ただお前と共にこの世を生きたいだけなのに。
「…殿?」
斜に構えたお前が背中合わせの俺を呼ぶ。
何故か返事が出来ない。
「…泣いておられるのですか?」
例えば泣いているのだとして。
泣いていると答える奴が何処に居る。
「だんまりを決め込むのですか?」
何か言いたい、お前に言いたい。
だが言葉に出来んのだ。
文句が何一つ浮かばんのだ。
「殿」
振り向いたお前は、なんだか当然のように俺を抱き締めた。
「…どうしてそんなに、俺と居るのに悲しそうなんだ?」
「………愛しさが過ぎると、殺してしまいそうで怖いんだ」
左近は口元を上げて、三成を惰性で組み敷いた。
涙目を覗き込むように左近は三成を見詰めた。
「…殿、今更俺に寄生されてるって気付いたんですか?」
「…今更って…お前…」
「搾取されてて自覚が無いとは、俺が色男過ぎるのか、殿が鈍いのか…」
なんだ、と三成は目の前の愛しい顔を見詰めつつ悟った。
互いに麻酔を掛け合って、互いを宿主としていただけなのか。
三成は黙って、左近の首に腕を回した。
終