しずかでやわらかい和のお題20





托生



寄生している、気がしてならない。
距離を取ろうとしているが其れすらうまくいかない。
どうしてしまったんだろう俺は。
気が付けばお前の傍に居る、お前を探している、困らせている。
不安と並べればこの行為が許されるか、否。
お目付け役と押し通せば許されるか、否。
好きだからと言えば許されるのか…否。
あぁ、ただお前と共にこの世を生きたいだけなのに。
「…殿?」
斜に構えたお前が背中合わせの俺を呼ぶ。
何故か返事が出来ない。
「…泣いておられるのですか?」
例えば泣いているのだとして。
泣いていると答える奴が何処に居る。
「だんまりを決め込むのですか?」
何か言いたい、お前に言いたい。
だが言葉に出来んのだ。
文句が何一つ浮かばんのだ。
「殿」
振り向いたお前は、なんだか当然のように俺を抱き締めた。
「…どうしてそんなに、俺と居るのに悲しそうなんだ?」
「………愛しさが過ぎると、殺してしまいそうで怖いんだ」
左近は口元を上げて、三成を惰性で組み敷いた。
涙目を覗き込むように左近は三成を見詰めた。
「…殿、今更俺に寄生されてるって気付いたんですか?」
「…今更って…お前…」
「搾取されてて自覚が無いとは、俺が色男過ぎるのか、殿が鈍いのか…」
なんだ、と三成は目の前の愛しい顔を見詰めつつ悟った。
互いに麻酔を掛け合って、互いを宿主としていただけなのか。
三成は黙って、左近の首に腕を回した。