しずかでやわらかい和のお題20





落花流水



二つで一つとはよく言った物だと思う。
流れる水も花を望んで、花もまた共に流れる事を願った。
「ほら、外に出て来なよ。」
屋敷に引篭もりがちな私を外に連れ出して、そなたは笑う。
美味い団子を手に入れただとか。
面白い本が手に入っただとか。
持って来ようとは思ったんだけどなんて嘘ばかり吐いて。
忘れてきたなんて嘯いて。
私を連れ回す。
「慶次…そんなに急かずとも、団子は逃げぬ」
庭先に馬まで引いてきて出かけよう!だものな。
「…違うぜ、今日は……」
兼続は弁明しようとしていた口を、庭先に下りてそっと手で押さえた。
触れた己が驚くほどの、仕草だったが、もう憚る間柄ではいられない。
「回りくどいぞ慶次。逢瀬と洒落込もうではないか」
熱心なそなたに、いつしか心を奪われてしまったのだから。
慶次は見下ろして居た目を瞑って、口に宛がわれた白い手を退けた。
「…あんたには、白と黒しか無いのかね」
そう言いながらも、手はしっかりと退けた手に絡められている。
指が瞬く間に熱を帯び、こちらが困るほどに熱くなる。
「何処にでも攫われてやると言っているのに、不満なのか?」
「不満だ。」
その太い腕が伸びてきたかと思うと、次には今まで味わった事の無い感覚に見舞われる。
引き寄せ抱き締められたのだ、もうこれ以上ない程強く鮮やかに。
「俺ぁ…落ちた花を攫いたいんじゃない、落とした花を攫いたいんだよ。」
抱かれた懐の温かさに兼続は思わず微笑む。
「…だが…勝手に落ちてきたにせよ、それを見初めてたんなら攫わない訳は無いねぇがな」