しずかでやわらかい和のお題20





旭光の窓



「そなたは何時でも、まるで旭光の如く煌いているな!」
この鄙びた姿を見てよくそんな言葉が出るものだ。
戦とはまるで縁がなく、こんな平穏な軒先に寝転がる俺を見て。
「…あんたは、何時でも煮え滾る熱湯のような男だね」
慶次はまた何か熱弁が始まったと、欠伸をしつつ返事をした。
俺の腑抜け切った切り替えしには全く耳を貸さず、兼続は続ける。
「何故かは分からんが、そなたに会うと不思議と現世がどうでもよくなる」
褒められていると言うよりは、貶されている感が強いのは気のせいではあるまい。
慶次は眉を顰めて、庭で喚くような兼続を見ていた。
「明るすぎる日の光に目が眩むと言えばよいのか…」
気が付けば、兼続は俺と話すために此処に来たのだろうに、どうやら俺を見ては居なかった。
俺の後ろの真木柱を熱心に見詰めている感じだ。
「眩し過ぎて…白い闇に飲み込まれるような、心地がしてならんのだ!」
ふと俺の目線に映る兼続の拳が、きつく握り締められ震えていることに鼓動が高まった。
そっと視線を上に移すと、片手も握り拳を作り胸に当てている。
「私は、伝えず後悔するより、伝えて玉砕する方が性に合っている!」
白い肌に頬には朱を乗せて。
双眸は泣かない様に睨みを効かせているように見えるのは。
俺の見間違いではあるまいに。
「私はそなたの放つ光に盲目とされ、身動きが取れぬのだっ…!」
慶次は身を起こして庭先に下りた。
近寄って顔を覗き込めば、兼続は好いた男を見上げるているとは到底思えない瞳で睨み返してきた。
「…あんたみたいな男を、巷では鈍いって言うんだよ」
そんなに震えてまぁ、一世一代の心構えだったんだねぇ。
…俺がどんな気持ちで今迄過ごしてきたと。
あんた、思ってる?
「…潤んだ瞳で喧嘩を売るのは、卑怯って言うんだぜ?」