君がまにまに
また随分と厄介な相手に煩ってしまったと思う。
理屈ではないとか色々と、纏わる言葉が脳裏を過ぎる。
三成は冷静に客観的に己の状況を把握した。
しかし何ゆえ、この様になるのだろうか。
頻りに高鳴る胸に問いかけてみるも、鼓動が早くなるだけである。
しかも決まって、お前が近くに居るときには。だ。
「……調子が悪いのか?」
そんな事はあるわけは無い。
寧ろ、体と心がちぐはぐで、どうして頭がこんなに冷静なのか。
逆に体が問いかけてくるような、心持。
「左近か…?」
あ、脈が早まったぞ。
三成は押さえた胸に驚いた。
これは中々に重症かもしれない。
「…殿、お呼びですか?」
「…!!!?」
「あの…般若に遇った様な形相で俺を見上げるの止めてもらえませんかね」
俺そんなに怖い顔ですかね?と解れた顔に、胸が五月蝿い。
「…何故お前がここに居る…」
止めろ、心の臓よ、声を震わすな。
「…やですね、評定ではありませんか…」
「ぁ、そうであったな…」
直ぐ行くと胡坐を崩すが、なんだか上手く立てない。
お前が見ているからなのか、体がぎこちない。
「足でも痺れましたか?」
笑いながら左近が俺の二の腕を上に引き上げた。
「…止めぬか、痛い…」
左近は慌てて手を離し、これは失礼仕った。と苦笑った。
そして、では先に参ります故に。と部屋を出る。
「………弱った…胸が痛い……」
三成は恋を煩ってしまったのだと、頭と心で認めざるを得なかった。
終