雪月花





***千日紅***



傍らの暖かさを日に日に辛く思われるのは何故だろう。
兼続は深い眠りについている慶次の腕枕からそっと体を動かした。
そして、肌蹴て露わになった逞しい胸板にそっと頬を寄せた。
どちらがどちらを虜としてこの関係が始まったのかは分からない。
気が付けば互いに気付かされた感情が、私たちを結びつかせるように押し流していた。
そうとしか思えない程、私たちは相手に深く陶酔した。
「…嫌だ…」
朝が来るのが憎らしい。
いつか離れなければならないこの身が嘆かわしい。
そなたの瞳に映る総てに、嫉妬が抑えられない。
兼続は沿わせた頬から伝わる温もりを逃さないように記憶する。
馴初めた頃は幸せだったこの行為。
だが、何時からだろう。
いつかが来ても大丈夫なようにと、思うようになったのは。
「…なぁ、私はどうしたらいい?…」
愛しくて愛しくて。
愛されて愛されて。
そなたに舞い上げられた私。
私を舞い上げるそなた。
幸せ過ぎて、仕合わせ過ぎて堪らない。
「…でも…そなたに…」
舞い上げられたこの身は。
生きながら天にまで手が届いたこの身は。

風が止めば。
墜ちるしか無いのだよ。

大河記念第二弾。