七十二





*鷹化為鳩*



「…郭公が啼いてらぁ…」
静かに特徴的に鳴く声に慶次は、良い声だと耳を澄ませた。
松風に少し黙んなと言いながら目を閉じたのを見て、兼続もまた目を閉じた。
そして思うのだ、そなたと出かけると道草が多いと。
ふと、何かが葉に当たって落ちた音がした。
「…?」
兼続は馬を下りて、そっと近づく。
慶次もどうした?と降りて近づいた。
草が緩衝材になったのか、潰れた卵の上に目も開いてないような幼い雛が動いていた。
見上げると木の天辺に巣があるようだ。
…これも、定めよな…
兼続は落すように笑って、慶次を見た。
「…どうせこいつは、また巣から蹴落とされちまうしな」
心を読まれているというよりは同じ事を考えていたのだ。
慶次はポンと肩を叩いて、私を引き寄せた。
「…もしそなたに寄生する奴が現れたら、こんな事をしてしまうといったら。」
己の口から出たとんでもない言葉に、自分自身が驚いた。
でも、止まらなかった。
「…そなたは私を、巣から落すか?」
慶次は、ふっと笑い視線を逸らして言った。
「…虎の寝床に寄生する奴なんて聞いたことないぜ?」
そして続けて。
「俺は気に入らなかったら、喉元食い千切って骨まで食っちまうよ」
と続けた。
気に入って貰えて良かったよ、と抱きついた足元で、雛は動く事を止めていた。