七十二





*草木萠動*



どんなに雪深くても、必ず冬は終わる。
慶次は庭先に見つけた小さな春の息吹に頑張れと微笑んだ。
頑張れと言えば、念友然り。
死んでも傍を離れないであろう主のため。
兼続はこの財政難な現状をどうにかこうにか切り抜けようと右往左往。
奔走しまくっているのだ。
「………まぁ、俺が出来るのは応援だけだし」
それと、あんまり無理して寝ないあんたを無理に布団に押し込むぐらい。
…何をするかなんて、野暮ったいにも程が有るが。
でもそうしなきゃあの御仁は寝ないんだ。
「…もしかして」
慶次はふと、細氷の舞う庭を見ながら思う。
もしかして態とでは無いのだろうか。
休むという口実を、甘えるという言い訳を。
繕う為に。
日光を受けた細氷は、綺羅の様に輝きながら寒さを忘れる舞を披露する。
毎年必ず何度も見られる景色なのに、その美しさは衰える事はない。
慶次は息を呑むような光景に、心躍るようで落ち着かない感情を覚える。
「…逢いたいね…」
細氷を溶かすように照らす太陽が。
なぜかどうして己の行為に美しさを覚えている気がしないでもなくて。